社長大学

取材・講演依頼

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有限会社北川鶏園 代表取締役三代目 北川貴基

洋菓子店絶賛の卵、お客さまに教えてもらった強み

実は、パティシエさんから呼び出されて怒られたことがあります。

「卵が緩くてスポンジが膨らまない」って言うのです。

メレンゲを作る際に、卵のこしによって泡立ちが左右されるようなのですが、北川鶏園の卵はこしが強いのでいいメレンゲが作れることがわかりました。そこにメリットを感じて使ってくださっているケーキ屋のお客さまが多い、ですから卵の品質が少し変わってしまうと卵が緩くてスポンジが膨らまないって呼び出されて理由を説明することになるのです。良い卵はしっかり空気を含んで泡立ちがいいのでスポンジがたくさん作れるのだそうです。北川鶏園の卵は一般の卵よりは割高だけど、スポンジがたくさん作れることで実はコストパフォーマンス的にも他の卵に負けないって言ってもらったときには衝撃でした。

普段、卵は生産していますが、ケーキは作らないですからお客さまに言われるまでは分からなかった特徴です。

浅草の今半(すき焼きで有名なお店)でも本店と特定の店舗で使ってもらっています。すき焼き用ですから生です。加熱して使う卵より生で使っていただく方が一番美味しさがわかります。卵のプリプリ感が違いますからね。今半では、レジ横にお肉の個体識別番号を掲げているところの下に「卵・・・北川鶏園」って書いていただいてます。肉の掲示は多いですが、卵まで書いてくださるのはうれしいですよね。

美味しい卵のために

先ほど、パティシエに怒られたという話がありましたが、あれは春先の事でした。寒暖の差が激しい時期に鶏がストレスで体調を崩して卵が緩くなってしまったのです。鶏も寒暖の差はストレスになって風邪ひいてしまいます。でも、鶏舎にエアコンを入れるわけにはいかないじゃないですか。ですからうちでは若いうちに敢えていじめるようにしています。大人の鶏が住む鶏舎には壁がありますが、若い鶏は自然に近い状態の青空鶏舎で育てます。寒暖の差を受けやすい網のケージにトタン屋根がついているだけの鶏舎で育てています。風もビュービュー通りますし、暑ければものすごく暑いし、寒ければ凍えるほど寒い。そうすると餌をいっぱい食べることになるので、餌の効率は悪くなります。ですから普通の養鶏場ではやらない飼育方法ですが、結果的には、多少のストレスはストレスとして受け止めない、強い子に育ちます。卵を産みだしたときに良い卵を産んでくれるようになります。

トマト農家さんが、わざとトマトの茎をねじって栄養分がないような状態にしていじめるとトマト自身が必死に養分を取り込みに行って美味しくなるって言っていたのと同じような事だと思います。

これは自分で考えたわけではなく、祖父の代からの養鶏方法です。パティシエさんから「何でこんなこしの強い卵ができるのか?」って聞かれますが、考えてみると、日進月歩でいろいろな技術も進歩していますし、それを取り入れたりもしていますが、こういった育て方が非効率だけれど実は理にかなっていたのかなと思います。

 

今後の野望(烏骨鶏編)

今、烏骨鶏の卵も養鶏しています。烏骨鶏は小さな鶏でピークでも3日に1回しか産まないような、卵の数が取れない鶏です。卵自体も小さいですが、黄身の味が濃くて脂肪分が多い。濃厚でこってりした卵です。その卵をミシュランガイドに載るようなお店に供給したりしています。「この卵が光るところはないですか?」って聞いたりしながら。手探り状態ではありますが。卵に特徴を持たせて、北川鶏園の色を濃くしていきたいと思っています。卵につけて食べるスタイルではなく、一皿ですき焼きを完成させる、すき焼きの上に北川鶏園の烏骨鶏の卵を半熟で乗せて卵をくずしながら食べる料理を作ってくださったお店でいただいた「これ以上の卵はない」って言う言葉が本当にうれしかったですね。今、3万羽の養鶏場を小規模で経営していますが、規模を拡大して5万羽に増やしたり、といった上を目指す経営よりも、北川鶏園はよりコアなところを目指したいですね。深く掘っていく、変な卵屋を、特徴的な卵屋を目指したいですね。

(文章・山田瞳)